水曜日

『サンデー毎日』に掲載された志茂田景樹先生のインタビュー『14歳のきみたちへ』

SUNDAY LIBRARY:INTERVIEW 志茂田景樹

http://mainichi.jp/feature/news/20140225org00m040017000c2.html


◆『なんで!? 納得できない… 14歳のきみたちへ』志茂田景樹・著(じゃこめてい出版/税込み1260円)
 人の一生における、十四歳という季節。時代の違いはあっても、そこにはある種の普遍性が宿っているはずだと志茂田景樹さんは考える。

「中1の時はまだ小学生の気分を引きずっていますが、十四歳になると大人の自我が芽を出します。さまざまな葛藤があり、自分で自分を持て余すようになり、親もわが子が見えなくなる。そんな時期の子たちに届く本を作りたいと思いました」。

 学校、仕事、日本、愛と四つのテーマを設定し、Q&A方式で悩みや疑問などについて触れている。

「1999年から『よい子に読み聞かせ隊』と称して活動を始めました。その過程で出あった問いや、ツイッターに寄せられた中学生の質問などがベースになっています」

 読み聞かせ活動は、これまで通算千六百回以上、多い年では二百回を超えたこともあるという。
「阪神淡路大震災から四年ほどたった時、西宮市のある小学校のPTAの方からオファーがありました。『この地域では、いまだに夜中に悲鳴をあげて飛び起きる子、道路を大型トラックが通過する際、その振動が怖くて周囲にいる大人に抱きつく子などがたくさんいます。
絵本の読み聞かせで、少しでも心を癒やすことができないでしょうか』と」
 

依頼を快諾した志茂田さんにはしかし、不安もあった。志茂田さんの書く絵本には必ず悲しい場面がある。苦しんでいる子供たちを前に、いつも通りにやっていいものだろうか。

「しかし先入観は良くないと思い直し、普段通りにやりました。すると、悲しい場面で涙を流す子が通常の何倍もいて、最初、『やはりまずかったか』と思いました。でも違ったんです。彼らは感動してくれたんですね。読み聞かせの後、子供たちがいつまでもぼくたちにくっついて離れない、その様子からよくわかりました。その時の経験から、命の大切さ、生きることの素晴らしさを伝えることを根幹に据えようと決めたんです」
 

そして3・11以降、また新たな局面に立たされることになる。

「栃木県小山市の避難所を訪ねた時、ある小学校高学年の男の子が、『ぼく、これからどうなっちゃうんだろう?』とつぶやいたんです。

これは『自分の体は五年、十年後にどうなってしまうのか?』という、根っこにこびりついた不安で、今までとはステージが違う。読み聞かせにその不安を払拭する力はないと、無力感にさいなまれました」

その不安を口にした子が十四歳を迎えた時、この社会を、この国を、そして愛というものをどんなふうに受け止めてほしいのか。

この本には、そんな厳しい認識も込められている。

だからここには、手っ取り早い解決の処方箋は出てこない。
「それでも少しは、言葉を通じて、届けられることがあるだろうと思っています。読み聞かせは九十五歳くらいまではできそうな気がしているんです(笑)。

その後は沖縄に移住してのんびり執筆。百歳を超えて書いていればそれだけで希少価値があり、少しは仕事も来るでしょう(笑)」
 
微力は無力ではない。そう信じて、作家は言葉を届けるのみだ。
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しもだ・かげき 1940年静岡県生まれ。20種類以上の職を転々とした後、作家を志し、80年、『黄色い牙』で直木賞を受賞。「孔雀警視」シリーズなど人気作のほか、近年は絵本の執筆と読み聞かせ活動に力を注いでいる
<サンデー毎日 2014年3月9日号より>

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